空間は透明・静寂感は最高音域

私は震災後、それまで住んでいた街の上流域の山間部に住宅再建しました。

家の裏山には山の神様が祭ってあり、山の神様から降りてくる山道が家のすぐ脇を通っています。

2階の寝室兼リビング(簡易防音室)のベランダに出て、椅子に座りよく星を眺めます。


夜の「シーン」と静まり返った静寂の中、耳を澄ますと「カサッ カサッ」っと音がします。

夜になると鹿が山道を降りてきます。

数頭の鹿が草を食む音や歩く音が聴こえます。


300mほど先には渓流が流れています。

大雨の後には轟々と流れの音が聴こえますが、普段でも「サー」っと音が聴こえます。

音の周りはあくまでも「シーン」と静寂です。

ずっと遠くの音が聴こえるほど、空間の音は透明です。


静かな山の中だから改めて感じる事ですが、音楽も同じです。

各楽器やボーカルの周りは静寂です。

空間は透明に澄んでいます。


太すぎるケーブルは低音域のダブつきと停滞を伴い空間の透明感を損ないます。

楽器の音がまとまって音像厚くガツンと出てきます。

低音域のダブつきはダブついていない音と比較しないと分かりません。

比較しても「厚みのある音が好き」と感じるかもしれませんが、間違いなく空間の透明感は損なわれています。


「厚みのある音」はオーディオ的であって、本来の自然な音ではありません。


「厚みのある音が好き」と太いケーブルを使用されている場合は、空間表現が良いと思っていても、本当の意味での空間表現は再生されていません。

オーケストラでもJAZZのライブ演奏でも、各楽器が奏でる音の厚み以外の「音の厚み」は存在しません。

あるのは透明な空間と静寂です。

リアルな再生音は透明な空間が再現されてこそなのです。



鹿は右の手前山道から降りて来て、前の古い納屋が雨風をしのぐ休憩場所になっています。

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